パーキンソン病は現時点では根本的な治療方法は存在せず、日本では指定難病とされています。しかし、患者様の症状に合わせた薬物療法(お薬の治療)に運動療法を取り入れることで治療効果のアップが望めます。また、パーキンソン病の合併症を防ぐことも重要です。
①薬物治療
レボドパ含有製剤を内服することで不足したドパミンを補充する治療方法です。パーキンソン病の内服薬はその他にもありますが、当院ではこのドパミン補充療法を重視して行います。なぜならレボドパ含有製剤は現時点で最も有効な治療薬であるからです。一方で、前述したように吐き気や便秘などの副作用が生じる可能性があり、一度経験すると次回からの治療に大きく支障をきたします。
当院ではレボドパ含有製剤の副作用を極力抑えることを目的に初期は少量投与で行い、時間をかけて内服量を調整していきます。
②運動療法
人間は体を使わないとその部位は機能が落ちてきます。これを廃用と言います。パーキンソン病の患者様は手足の動きにくさが生じますので運動不足になりがちです。そうすると廃用が生じてきますのでますます動きにくくなり寝たきりになりかねません。当院では廃用の予防のために運動療法をお勧めします。
毎日楽しく行うことが重要ですので、ゆるさんぽを行うことをお勧めします。
ゆるさんぽのポイント
- 1日15分程度のウォーキング(背筋を伸ばす、手を大きくふる、太ももをしっかり上げる)
- おしゃべりしながら、周りの四季を感じながら(頭を使う)
- 毎日続ける
です。おしゃべりしながらウォーキングすることで、手足、体幹、頭を使うことになりますので体全体の廃用予防(認知症予防、寝たきり予防)になります。また運動の強度もおしゃべりできるぐらいが丁度いいです。「少し物足りないな」と思うぐらいの運動時間と運動強度で楽しく行うことが長続きのポイントです。
③合併症の予防
パーキンソン病の合併症で多いのは大腿骨頸部骨折と誤嚥性肺炎です。これらの合併症により前述した廃用になり認知症や寝たきりにつながることが少なからずあります。
大腿骨頸部骨折の予防には転倒しないことが重要です。室内でのスリッパ使用は転びやすくなりますので避けましょう。また、立ちくらみ(起立性低血圧と言います)を起こし転倒することがあります。ゆっくり立ち上がり症状がないことを確認してから歩き始めましょう。誤嚥性肺炎の予防には、食事内容を工夫することで弱くなった噛む力と飲み込む力(嚥下と言います)をサポートすることが効果的です。具体的には食材を小さくする、やわらかくすることで噛む力をサポートし、とろみをつけることで飲み込む力をサポートすると効果的です。