1)特徴
緊張型頭痛は全ての頭痛の中で最も多い頭痛です。特に働き盛りの30~50歳代の女性に好発します。原因は後頭部筋群と呼ばれる頭の後ろの筋肉(僧帽筋、頭板状筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋など)を包む筋膜が何らかの原因で痛みに敏感となり生じると考えられています。その何らかの原因は以下に示す通り多彩です。
- 姿勢
- 睡眠障害
- 職場環境
- 片頭痛
- 歯科的問題(噛み合わせ、齲歯など)
特に多いのが、パソコンやスマホ操作を同じ姿勢で長時間行っている方です。また、コントロール不良な片頭痛が緊張型頭痛の誘因となることも少なくありません。女性に緊張型頭痛が多いのは女性に片頭痛が多いからではないかと私は考えています。
2)診断方法
緊張型頭痛は頭部MRI検査で異常所見がありません。逆にいうとMRI検査で「脳には異常がない」というのが緊張型頭痛の所見です。そのため「なんでもない頭痛」と言われ、緊張型頭痛という診断名に至らないことも少なくありません。
確かに、緊張型頭痛は確実に診断できる検査方法は確立していない疾患ですが、①問診、②身体所見、③頭部MRI検査を行うことで診断に近づくことが可能です。
①問診
緊張型頭痛の特徴を念頭に問診します。チェックします。以下が、私が必ずお伺いする「緊張型頭痛のシンプル問診5項目」です。
緊張型頭痛のシンプル問診5項目
- 40歳以降に発症した
- 持続的な痛み(痛い時と痛くない時がはっきりしていない)
- 仕事やスポーツなど他のことに打ち込んでいた方が気がまぎれる
- 歩行で悪化しない
- 肩こりがある
②身体所見
緊張型頭痛は痛みの誘因となっている部位、いわゆるトリガーポイントがあります。トリガーポイントは指圧により痛みが出現する圧痛点のことです。以下に緊張型頭痛の診断で重要な緊張型頭痛のトリガーポイントを紹介します。
緊張型頭痛のトリガーポイント
- 風池(ふうち):僧帽筋上部、頭板状筋、頭半棘筋の付着部(停止部)
- 肩井(けんせい):僧帽筋
トリガーポイントはこの他にもいくつもありますが、私はシンプルにこの2箇所を重点的に診察しています。緊張型頭痛ではMRI検査で異常所見が認められないため、このトリガーポイントは非常に重要な診断の鍵となります。
③頭部MRI検査
緊張型頭痛はMRI検査で異常所見を検出できませんが、命に関わる頭痛(二次性頭痛)を除外するために頭部MRI検査は非常に重要です。また、MRI検査で異常所見がないことは緊張型頭痛を支持する所見の一つとなります。
3)治療方法
①緊張型頭痛の誘因を取り除く
誘因を取り除くことが重要です。例えば、パソコン作業で同じ姿勢で長時間行っている患者様にはそれが原因となっていることをお伝えし改善していただくようアドバイスします。
②後頭部筋群をほぐす
以下の3点をお勧めしています。
- 温かいタオルなどで、首と肩を温める
- ストレッチで筋肉をほぐす
- トリガーポイントを指圧する
後頭部筋群のほぐしは時間がかかりますので誘因や症状に応じて鎮痛薬を併用します。「結局、鎮痛剤を使うのか」と思われるかもしれませんが、「なんでもない頭痛」と診断され漫然と鎮痛剤を内服するのと、「緊張型頭痛」と診断し補助的に鎮痛剤を使用するのとでは治療効果はもちろん患者様の安心感にも雲泥の差があります。
4)予防方法
緊張型頭痛は再燃することがあります。再燃しないためにも誘因を取り除くことが重要ですのでしっかりと誘因を把握しましょう。