片頭痛・緊張型頭痛

片頭痛・緊張型頭痛|板橋区の脳神経外科・内科 - のむら脳神経外科

片頭痛について

日本人の約10人に1人は片頭痛をと言われるほど片頭痛で悩まされている方は多いです。特に働き盛りの20~40歳代の女性に多く、30代、40代の女性は約20%が片頭痛と言われています。片頭痛は生活に支障をきたすほど強い頭痛で、市販の鎮痛剤で我慢しながら生活をされている患者様も少なくありません。また、診断は意外に簡単ではなく医療機関を受診されても治療に結びつかないケースも少なくありません。片頭痛は命に関わらない頭痛ですが人生に関わる頭痛です。私は脳神経外科専門医として見逃してはいけない頭痛と考えています。

1)特徴

片頭痛の診断が意外に簡単ではないと前述しました。なぜなら片頭痛はMRI検査でも異常所見が認められないからです。重要なのは「問診」です。問診とは患者様からご自身の頭痛の情報を引き出す診察技術です。つまり問診技術がないと片頭痛の診断は非常に困難なのです。
以下が、私が必ずお伺いする「片頭痛のシンプル問診8項目」です。

片頭痛のシンプル問診8項目

  • 10代、20代ぐらいからの頭痛持ち
  • 頭痛がある時とない時とでハッキリしている
  • 頭痛時、光や音や香りに敏感になる
  • ご家族で頭痛持ちの方がいる(母親が多い)
  • 徐々に悪化していくのがわかる
  • 低気圧が近づく(天気が悪いと)と頭痛が出てくる
  • 頭痛時は横になって部屋を暗くして休んでいたい
  • 頭痛が生じる前または頭痛時に吐き気や胃のムカムカ感がある

上記の8項目のうち5項目以上が当てはまるのであれば片頭痛の可能性が高いです。片頭痛の診断には自信を持っております。上記の「片頭痛のシンプル問診8項目」に思い当たりがございましたら当院にご相談いただくことをお勧めします。

2)診断方法

片頭痛は確実に診断できる検査方法は確立していない疾患ですが、①問診、②頭部MRI検査、③診断的投薬を行うことで診断にたどり着くことが可能です。

①問診

「片頭痛のシンプル問診8項目」をチェックします。

②頭部MRI検査

片頭痛の患者様は非常に強い頭痛を訴えて受診されることが少なくありません。前述したように片頭痛はMRI検査で異常所見を検出できませんが、非常に強い頭痛の原因となる命に関わる頭痛(二次性頭痛)を除外するために頭部MRI検査は非常に重要です。
また、MRI検査で異常所見がないことは片頭痛を支持する所見の一つとなります。そして、後述する片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤は脳血管障害や脳虚血発作があると投薬できません。MRI検査で脳血管狭窄やモヤモヤ病といった脳血管病変がないことを確認し、安全に投薬治療するためにも非常に重要な検査です。

③片頭痛の治療薬を診断的に使用する

具体的にはトリプタン製剤を投与し効果を確かめます。トリプタン製剤は片頭痛に特化した治療薬なので、片頭痛以外の頭痛にはほとんど効果がありません。頭痛が生じた際にすぐに内服するように指導し、症状の改善があるかチェックします。

3)治療方法

片頭痛の基本治療薬は特効薬であるトリプタン製剤と片頭痛予防薬です。鎮痛剤を内服することは適切な治療方法ではありません(痛み止めの常用により、薬剤性頭痛や薬剤性腎機能障害に至るリスクがあります)。また、患者様の状態に合わせて漢方薬を代用として処方することもあります。
片頭痛は日常生活の質を著しく低下させます。一方で、片頭痛は特効薬があり診断がつけば劇的に生活の質が改善します。「もっと早く相談したらよかった」と患者様から言われることが非常に多い頭痛です。

4)予防方法

片頭痛は睡眠不足や環境の変化などのストレスによって悪化することが多いです。治療薬と並行し、睡眠不足の改善やストレッサー(ストレスの原因)を取り除くことも必要です。

まとめ

  • 片頭痛は10人に1人が患う頻度の高い頭痛でかつ生活に支障をきたす。
  • 片頭痛は問診と頭部MRIを行うことで診断していく。
  • 片頭痛治療の中心はトリプタン製剤と予防薬。
  • 片頭痛の予防として十分に睡眠をとり、ストレスをためない生活を目指す。

緊張型頭痛について

1)特徴

緊張型頭痛は全ての頭痛の中で最も多い頭痛です。特に働き盛りの30~50歳代の女性に好発します。原因は後頭部筋群と呼ばれる頭の後ろの筋肉(僧帽筋、頭板状筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋など)を包む筋膜が何らかの原因で痛みに敏感となり生じると考えられています。その何らかの原因は以下に示す通り多彩です。

  • 姿勢
  • 睡眠障害
  • 職場環境
  • 片頭痛
  • 歯科的問題(噛み合わせ、齲歯など)

特に多いのが、パソコンやスマホ操作を同じ姿勢で長時間行っている方です。また、コントロール不良な片頭痛が緊張型頭痛の誘因となることも少なくありません。女性に緊張型頭痛が多いのは女性に片頭痛が多いからではないかと私は考えています。

2)診断方法

緊張型頭痛は頭部MRI検査で異常所見がありません。逆にいうとMRI検査で「脳には異常がない」というのが緊張型頭痛の所見です。そのため「なんでもない頭痛」と言われ、緊張型頭痛という診断名に至らないことも少なくありません。
確かに、緊張型頭痛は確実に診断できる検査方法は確立していない疾患ですが、①問診、②身体所見、③頭部MRI検査を行うことで診断に近づくことが可能です。

①問診

緊張型頭痛の特徴を念頭に問診します。チェックします。以下が、私が必ずお伺いする「緊張型頭痛のシンプル問診5項目」です。

緊張型頭痛のシンプル問診5項目

  • 40歳以降に発症した
  • 持続的な痛み(痛い時と痛くない時がはっきりしていない)
  • 仕事やスポーツなど他のことに打ち込んでいた方が気がまぎれる
  • 歩行で悪化しない
  • 肩こりがある

②身体所見

緊張型頭痛は痛みの誘因となっている部位、いわゆるトリガーポイントがあります。トリガーポイントは指圧により痛みが出現する圧痛点のことです。以下に緊張型頭痛の診断で重要な緊張型頭痛のトリガーポイントを紹介します。

緊張型頭痛のトリガーポイント

緊張型頭痛のトリガーポイント
  • 風池(ふうち):僧帽筋上部、頭板状筋、頭半棘筋の付着部(停止部)
  • 肩井(けんせい):僧帽筋

トリガーポイントはこの他にもいくつもありますが、私はシンプルにこの2箇所を重点的に診察しています。緊張型頭痛ではMRI検査で異常所見が認められないため、このトリガーポイントは非常に重要な診断の鍵となります。

③頭部MRI検査

緊張型頭痛はMRI検査で異常所見を検出できませんが、命に関わる頭痛(二次性頭痛)を除外するために頭部MRI検査は非常に重要です。また、MRI検査で異常所見がないことは緊張型頭痛を支持する所見の一つとなります。

3)治療方法

①緊張型頭痛の誘因を取り除く

誘因を取り除くことが重要です。例えば、パソコン作業で同じ姿勢で長時間行っている患者様にはそれが原因となっていることをお伝えし改善していただくようアドバイスします。

②後頭部筋群をほぐす

以下の3点をお勧めしています。

  • 温かいタオルなどで、首と肩を温める
  • ストレッチで筋肉をほぐす
  • トリガーポイントを指圧する

後頭部筋群のほぐしは時間がかかりますので誘因や症状に応じて鎮痛薬を併用します。「結局、鎮痛剤を使うのか」と思われるかもしれませんが、「なんでもない頭痛」と診断され漫然と鎮痛剤を内服するのと、「緊張型頭痛」と診断し補助的に鎮痛剤を使用するのとでは治療効果はもちろん患者様の安心感にも雲泥の差があります。

4)予防方法

緊張型頭痛は再燃することがあります。再燃しないためにも誘因を取り除くことが重要ですのでしっかりと誘因を把握しましょう。

まとめ

  • 緊張型頭痛は最も頻度の高い頭痛で女性に多い。
  • 緊張型頭痛はトリガーポイントの存在が診断の鍵となる。
  • 頭部MRI検査で命に関わる頭痛を除外することも重要。
  • 緊張型頭痛の治療の基本は、その誘因を把握し取り除くこと。