生活習慣病・心房細動

生活習慣病・心房細動|板橋区の脳神経外科・内科 - のむら脳神経外科

高血圧

患者様に「先生、血圧高いけど困ってません。治療必要ですか。」とよく聞かれます。高血圧は確かに自覚症状がありませんが、ゆっくりと動脈硬化を進行させる疾患です。この動脈硬化は脳卒中(脳梗塞、脳出血)の原因となります。また、心臓病、腎臓病など、脳卒中以外の寿命を大きく左右する病気の原因にもなります。これを知っているため医師は血圧の治療を行っているのです。
高血圧の原因は「本態性高血圧」と「二次性高血圧」に大きく分けられます。前者は年齢、肥満、食生活、運動不足、喫煙など原因は患者様ごとに様々です。後者はホルモン異常、血管の病気、薬の副作用などが関与しています。そのため治療方法は単純に血圧を下げる薬(降圧薬といいます)を飲むのではなく、患者様ごとの個々の原因を治療することが一番重要です。また、患者様の体質によっては血圧を目標値まで下げると体調が悪くなる方も少なからずいらっしゃいます。
また、当院ではMRI検査により脳血管の状態があらかじめわかっている患者様に関しては、患者様の脳血管の状態に合わせて血圧目標を決定します。患者様によってはすでに動脈硬化が進行し、脳血管の狭窄を生じている方がいらっしゃいます。そのような患者様の場合、一般的な血圧目標を念頭に治療を行うと、めまい、意識消失、脳梗塞などを引き起こしてしまう場合があるからです。

以上を踏まえ、当院では以下を念頭に高血圧の治療を行います。

  • 脳卒中、心臓病、腎臓病の予防を念頭に高血圧を治療します。
  • まずは高血圧の原因を患者様ごとに評価します。
  • 高血圧の原因改善と降圧薬を組み合わせた治療を行います。
  • 患者様の脳血管の状態に合わせ、患者様ごとの安全な血圧目標を決定します。

高血圧の治療は動脈硬化が生じる前に行うことが非常に重要です。まずはご自身の血圧を知ることから始めましょう。
また、血圧の把握には来院時血圧ではなく家庭血圧が重要です。来院時血圧は高くなるためどんどん薬が増えてしまうことがあるからです。その為、家庭血圧計を購入しご自宅で血圧を測定しましょう。
家庭血圧を測るポイントを以下に示しますが、何より重要なのは「継続する」ことです。「腕で測る血圧計で朝起きた時に一回だけ」これでまずは初め、慣れてきたら以下のポイントに従い計測しましょう。

血圧は「130」を目安にして予防することが大事です。1ヶ月血圧を測定し、130mmHg台が目立つようになりましたらお気軽に当院へご相談ください。とくにタバコを吸う方、糖尿病や腎臓病を合併している方は、早めの対策が必要ですから130mmHg台になったら、ぜひ受診を検討していただきたいです。

  • 血圧計は腕で測るタイプを使いましょう。
  • 朝夜の1日2回の測定、できれば2回ずつ測定して記載してください。
  • 測定前には必ず1~2分、話さず安静にしてから測定します。
  • 朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食の前、お薬を飲む前に測りましょう。
  • 夜は寝る前に測りましょう。

血圧値の分類

※左右に動かしてご覧いただけます。

分類 診療室血圧 家庭血圧
収縮期血圧 拡張期血圧 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 <120 かつ <80 <115 かつ <75
正常高値血圧 120-129 かつ <80 115-124 かつ <75
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89 125-134 かつ/または 75-84
Ⅰ度高血圧 140-159 かつ/または 90-99 135-144 かつ/または 85-89
Ⅱ度高血圧 160-179 かつ/または 100-109 145-159 かつ/または 90-99
Ⅲ度高血圧 ≧180 かつ ≧100 ≧160 かつ ≧100

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症も自覚症状がありませんが、ゆっくりと動脈硬化を進行させる疾患です。
血液中にコレステロールが増えると、血管の内壁に沈着してこぶを作り、血管がかたくなります。これが動脈硬化です。動脈硬化が進むと血管の中が狭くなり血流が悪くなったり、こぶが破れて血栓と呼ばれる血の塊を生じ、心臓や脳の血管を詰まらせることになります。血栓が心臓血管を詰まらせるのが心筋梗塞、脳の血管を詰まらせるのが脳梗塞です。コレステロールが高いだけで、これらの疾患に約2~3倍かかりやすくなります。その為、脂質異常症の治療は脳卒中予防に不可欠です。
脂質異常症の原因は年齢(代謝の低下)、肥満、食生活、運動不足など原因は患者様ごとに様々です。そのため治療方法は単純にコレステロールを下げる薬(抗脂血症薬といいます)を飲むのではなく、患者様ごとの個々の原因を治療することが一番重要です。
また、患者様の体質によっては抗脂血症薬の内服により体調が悪くなる(筋肉痛、下痢など)方も少なからずいらっしゃいます。

以上を踏まえ、当院では以下を念頭に脂質異常症の治療を行います。

  • 脳卒中、心臓病、腎臓病の予防を念頭に脂質異常症を治療します。
  • まずは脂質異常症の原因を患者様ごとに評価します。
  • 患者様の体質に合わせ、脂質異常症の原因改善と抗脂血症薬を組み合わせた治療を行います。

糖尿病

糖尿病もゆっくりと動脈硬化を進行させる疾患です。糖尿病になると、糖が血液中に溢れ返ってしまいます。高血糖がつづくと、血管を傷つけ、血管障害、動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞の原因となります。その為、糖尿病の治療も脳卒中予防に不可欠です。
初期症状としては

  • 尿に行く回数が増えた(頻尿)
  • 喉が渇く(口渇)

があります。ご自身の症状に当てはまるようでしたらまずは当院へご相談ください。また、自覚がないことも少なくありません。積極的に健康診断を活用し早期発見しましょう。

心房細動

心房細動とは

心臓は上下左右の4つの部屋から構築されています。そのうち上の部屋を心房といいます。心房細動とは、本来は一定のリズムで動く心房が、痙攣したように細かく震え、血液をうまく全身に送り出せなくなる病気です。心房細動の注意すべき症状は以下のふたつです。

①脳卒中(心原性脳梗塞:命に関わる脳梗塞)

②動悸や息切れなどの症状(心不全症状)

特に注意すべきは心原性脳梗塞です。血液には「固まる」という性質があります。これを「凝固」と言います。血液は淀みなく流れていると凝固しませんが淀みがあると凝固し血栓と呼ばれる固体化した血液の塊を形成します。この血栓が血流に乗り、脳の血管を詰まらせることによって心原性脳梗塞を引き起こすのです。心原性脳梗塞は脳梗塞のなかでも脳の広い範囲に障害を引き起こす可能性のある危険な脳梗塞です。
つまり、心房細動の治療ではまずは心原性脳梗塞を予防するということが重要です。さらに動悸や息切れなどの心不全症状も伴う場合は、心拍調整(レートコントロールと言います)の治療も考慮する必要があります。

原因

心臓には大きく分けて心房(上の部屋)と心室(下の部屋)の2種類の部屋があり、このうち、心房(右心房)にある洞結節という場所から規則正しく電気信号が発信されリズム良く拍動しています。心房細動は洞結節以外の場所から発生する異常な電気信号により心房が細かく激しく震えるように動く状態になってしまいます。

心房細動の種類

心臓には、血液を一定方向に流し、逆流を防ぐ役割を持つ「弁」があります。心房細動には下記の2つのタイプがあります。

  • 「弁」に異常がないタイプ(非弁膜症性心房細動)
  • 「弁」に異常があるタイプ(弁膜症性心房細動)

心房細動は、加齢により発症率が高くなります。高血圧や生活習慣との関わりも指摘されており、若年の人であっても、たとえば甲状腺機能亢進症やストレスを抱えている人や、カフェインの摂りすぎなど不規則な生活が原因で発症することもあります。

症状

無症状の人もいれば、動悸や息切れ、疲れやすい、不快感などの症状が現れることもあります。

検査・診断

聴診

基本的ですが私は日々の診療における聴診こそが非常に重要と考えています。実は心房細動は常に生じていないことも多いため(発作性心房細動と言います)、日々の診療で毎回聴診で不整脈の有無をチェックすることが重要です。
これまで私が診療した患者様の中には「聴診されたのは10年ぶり」とおっしゃる患者様も少なからずいました。必ず聴診を受けるようにしてください。

心電図検査(12誘導心電図検査)

触診や聴診で見つけた不整脈の種類を精査します。

ホルター心電図(24時間心電図検査)

聴診して異常がなくても、患者様から「今は大丈夫だけど、寝る時に時々脈が乱れる」と教えてくださることがあります。前述したように心房細動は常に生じていないことも多く、診察時には聴診や12誘導心電図では診断できないことも少なくありません。その時はホルター心電図という24時間の心電図計測を装着し自宅での脈の乱れを精査する必要があります。当院のホルター心電図は軽量で入浴なども可能です。脈の乱れが気になる患者様はお気軽にご相談ください。

治療

薬物治療とカテーテルによる治療に分かれ、一般的にまず薬物治療を行います。

薬物治療

血液をサラサラにして脳梗塞を予防するための抗凝固薬と、脈拍を整える抗不整脈薬があります。

(1)抗凝固薬

脳梗塞を予防するために、血液をサラサラにする抗凝固薬を内服します。高齢の患者様や高血圧症・糖尿病などの基礎疾患を持っている患者様では脳梗塞を引き起こすリスクが高いとされています。
抗凝固薬はご年齢、体重、腎臓の機能などにより副作用として出血をしやすくなることがあります。当院では上記を加味し、患者様ごとの適切な種類、適切な量の抗凝固薬を患者様と相談し調整いたします。

(2)抗不整脈薬

脈拍を整えるお薬を抗不整脈薬と言います。内服する目的は下記の2点が挙げられます。

①正常な脈の速度にする

②正常な脈のリズムにする

当院では正常な脈の速度にする治療を内服薬で行いますが改善がない場合は次に述べるカテーテル治療を考慮する必要があり循環器内科専門医様に紹介させていただきます。

カテーテル治療

薬物治療で不整脈が停止しなかった場合に行われる治療法です。
足の付け根の太い血管からカテーテルと呼ばれる細い管を心臓まで持っていき、心房細動を引き起こすきっかけとなる異常電気信号や心筋細胞を焼灼治療する手術です。
カテーテル治療が必要な場合、循環器内科専門医様に紹介させていただきます。