心房細動とは
心臓は上下左右の4つの部屋から構築されています。そのうち上の部屋を心房といいます。心房細動とは、本来は一定のリズムで動く心房が、痙攣したように細かく震え、血液をうまく全身に送り出せなくなる病気です。心房細動の注意すべき症状は以下のふたつです。
①脳卒中(心原性脳梗塞:命に関わる脳梗塞)
②動悸や息切れなどの症状(心不全症状)
特に注意すべきは心原性脳梗塞です。血液には「固まる」という性質があります。これを「凝固」と言います。血液は淀みなく流れていると凝固しませんが淀みがあると凝固し血栓と呼ばれる固体化した血液の塊を形成します。この血栓が血流に乗り、脳の血管を詰まらせることによって心原性脳梗塞を引き起こすのです。心原性脳梗塞は脳梗塞のなかでも脳の広い範囲に障害を引き起こす可能性のある危険な脳梗塞です。
つまり、心房細動の治療ではまずは心原性脳梗塞を予防するということが重要です。さらに動悸や息切れなどの心不全症状も伴う場合は、心拍調整(レートコントロールと言います)の治療も考慮する必要があります。
原因
心臓には大きく分けて心房(上の部屋)と心室(下の部屋)の2種類の部屋があり、このうち、心房(右心房)にある洞結節という場所から規則正しく電気信号が発信されリズム良く拍動しています。心房細動は洞結節以外の場所から発生する異常な電気信号により心房が細かく激しく震えるように動く状態になってしまいます。
心房細動の種類
心臓には、血液を一定方向に流し、逆流を防ぐ役割を持つ「弁」があります。心房細動には下記の2つのタイプがあります。
- 「弁」に異常がないタイプ(非弁膜症性心房細動)
- 「弁」に異常があるタイプ(弁膜症性心房細動)
心房細動は、加齢により発症率が高くなります。高血圧や生活習慣との関わりも指摘されており、若年の人であっても、たとえば甲状腺機能亢進症やストレスを抱えている人や、カフェインの摂りすぎなど不規則な生活が原因で発症することもあります。
症状
無症状の人もいれば、動悸や息切れ、疲れやすい、不快感などの症状が現れることもあります。
検査・診断
聴診
基本的ですが私は日々の診療における聴診こそが非常に重要と考えています。実は心房細動は常に生じていないことも多いため(発作性心房細動と言います)、日々の診療で毎回聴診で不整脈の有無をチェックすることが重要です。
これまで私が診療した患者様の中には「聴診されたのは10年ぶり」とおっしゃる患者様も少なからずいました。必ず聴診を受けるようにしてください。
心電図検査(12誘導心電図検査)
触診や聴診で見つけた不整脈の種類を精査します。
ホルター心電図(24時間心電図検査)
聴診して異常がなくても、患者様から「今は大丈夫だけど、寝る時に時々脈が乱れる」と教えてくださることがあります。前述したように心房細動は常に生じていないことも多く、診察時には聴診や12誘導心電図では診断できないことも少なくありません。その時はホルター心電図という24時間の心電図計測を装着し自宅での脈の乱れを精査する必要があります。当院のホルター心電図は軽量で入浴なども可能です。脈の乱れが気になる患者様はお気軽にご相談ください。
治療
薬物治療とカテーテルによる治療に分かれ、一般的にまず薬物治療を行います。
薬物治療
血液をサラサラにして脳梗塞を予防するための抗凝固薬と、脈拍を整える抗不整脈薬があります。
(1)抗凝固薬
脳梗塞を予防するために、血液をサラサラにする抗凝固薬を内服します。高齢の患者様や高血圧症・糖尿病などの基礎疾患を持っている患者様では脳梗塞を引き起こすリスクが高いとされています。
抗凝固薬はご年齢、体重、腎臓の機能などにより副作用として出血をしやすくなることがあります。当院では上記を加味し、患者様ごとの適切な種類、適切な量の抗凝固薬を患者様と相談し調整いたします。
(2)抗不整脈薬
脈拍を整えるお薬を抗不整脈薬と言います。内服する目的は下記の2点が挙げられます。
①正常な脈の速度にする
②正常な脈のリズムにする
当院では正常な脈の速度にする治療を内服薬で行いますが改善がない場合は次に述べるカテーテル治療を考慮する必要があり循環器内科専門医様に紹介させていただきます。
カテーテル治療
薬物治療で不整脈が停止しなかった場合に行われる治療法です。
足の付け根の太い血管からカテーテルと呼ばれる細い管を心臓まで持っていき、心房細動を引き起こすきっかけとなる異常電気信号や心筋細胞を焼灼治療する手術です。
カテーテル治療が必要な場合、循環器内科専門医様に紹介させていただきます。