1)くも膜下出血
特徴
突然発症する激しい頭痛と意識障害(朦朧とした状態)。
診断方法
問診、診察、頭部MRI検査(くも膜下出血の確認と動脈瘤の確認)
治療方法
緊急手術
2)脳出血
特徴
突然発症する頭痛と片側手足の麻痺(手足が動きにくい)。
診断方法
問診、診察、頭部MRI検査(脳出血の確認と異常血管の確認)
治療方法
緊急入院(降圧療法、リハビリ療法)
3)椎骨脳底動脈解離
特徴
動脈解離とは血管が裂ける状態のことです。首を強く捻った際に突然激しい後頚部痛を生じた際はこれを疑います。30代~50代の働き盛りの世代が多いです。脳梗塞(頭痛と同側の顔の感覚低下と反対側の手足の痺れ)を伴うこともあります。
診断方法
- 問診:上記の特徴以外に複視(二重に見える)、めまいの有無を確かめます。
- 診察:感覚低下、眼球運動障害、小脳失調をチェックします。
- 頭部MRI検査:MRI検査の中でも脳血流の検査であるMRA(アンギオグラフィー)が重要ですが、通常の頭部MRI検査よりも撮影範囲を広げないと見逃す可能性があります。つまり、椎骨動脈解離を想定し撮影しないMRI検査を行っても診断に至りません。
治療方法
基本は降圧療法を行い、脳梗塞やくも膜下出血を予防する治療を追加します。
4)下垂体卒中
特徴
脳には下垂体というホルモンを産生する部位があります。そこで出血を生じることを下垂体卒中と言います。突然発症する頭痛と吐き気に加え、急激な視力、視野の悪化(両側の耳側の視野が不良となります)を伴うのが特徴です。
診断方法
- 問診:上記の特徴を聞き出す。
- 診察:視野の異常(視神経の異常所見)、眼瞼下垂と眼球運動障害(動眼神経の異常)
- 頭部MRI検査:下垂体部での出血をチェックする
治療方法
ステロイドの補充、手術加療
5)脳静脈洞血栓症
特徴
脳静脈洞とは脳の太い静脈のことです。頭頂部の真ん中を前後に走行する上矢状静脈洞や後頭部を左右に走行する横静脈洞が閉塞すると脳静脈洞血栓症となります。
血液が固まりやすい状況にある患者様に多いです。具体的には炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、経口避妊薬の内服中、妊娠中、ホルモン補充療法などです。これらの診療にあたる消化器内科や産科婦人科の先生から紹介されることもあります。
診断方法
- 血液検査:Dダイマーが高値(血が固まりやすいことを示唆します)になります。
- 頭部MRI検査:MRI検査が非常に重要です。具体的に拡散強調画像、磁化率強調画像で静脈洞内における血栓(前者で高信号、後者で低信号)をチェックし、さらにMRV画像で静脈洞の流れをチェックします。
治療方法
緊急入院(脳出血を伴わない場合は抗凝固薬投与)
6)もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)
特徴
脳血管が進行性に閉塞していく日本人に多い原因不明の疾患です。脳梗塞(虚血型)や脳出血(出血型)を発症して判明することが多いですが頭痛で判明する(頭痛型)こともあります。
診断方法
以前は脳血管カテーテル検査が診断には必要でしたが、近年はMRI検査(1.5テスラ以上)での診断が可能となりました。
治療方法
頭痛型の中でも、小児の吐き気を伴う強い頭痛を伴う場合は、手術(血行再建術)により軽快することが多いです。
7)髄膜炎
特徴
風邪症状に引き続いて生じる激しい頭痛が特徴です。20代~40代の比較的若い世代に多いです。頭痛、発熱、嘔吐が特徴とされていますが、実際は激しい頭痛のみのことが多く、うなだれるような非常に辛そうな印象(見た目の印象をジェネラルと言いますが非常に重要な視診所見です)が特徴です。また、一度なった方は繰り返すことも少なくなく、「先生、また髄膜炎みたいです」と自己申告される患者様もいます(実際、ほとんどがご本人の勘通り髄膜炎です)。
診断方法
- 問診:先行感染の有無、これまでの髄膜炎の既往歴などを確認します。
- 診察:教科書的には首が硬くなる(項部硬直)や首を振ると痛がる(ジョルトサイン)がありますが、実際は所見がないことが多いです。やはり視診(ジェネラル不良)から「髄膜炎の可能性がある」と鑑別に挙げることが重要です。
- 頭部MRI検査:髄膜炎はMRI検査では異常所見はありませんが髄液検査を行うために頭蓋内占拠性病変の確認を行います。画像検査を行わず髄液検査をすることは非常に危険(脳ヘルニアの危険があります)なので必ず画像検査を行います。
- 髄液検査:腰に針を刺し(腰椎穿刺といいます)脳脊髄圧及び脳脊髄液をチェックします。当院では行えませんので髄液検査が可能な施設で行います。
治療方法
抗菌薬、抗ウイルス薬の投与
8)慢性硬膜下血腫
特徴
1~2ヶ月前の頭部外傷後に生じる頭重感(頭が重い)と片側手足の麻痺
診断方法
問診、診察、頭部MRI検査(血腫の確認)
治療方法
血腫量が少なければ内服薬で治りますが、血腫量が多い場合は手術(穿頭血腫洗浄ドレナージ術)が必要です。
9)脳腫瘍
特徴
起床後の吐き気を伴う頭重感が特徴です。また、頭痛を伴う脳腫瘍は大きいサイズであることが多く、手足の麻痺や失語症(言葉が理解できない、話せない)といった他の神経症状も伴っていることが多いです。
診断方法
問診、診察、頭部MRI検査
治療方法
手術(開頭腫瘍摘出術)が必要となりますが、腫瘍の種類により手術のエキスパートが異なります。当院で腫瘍に応じて最も信頼がおけるエキスパートの術者に紹介します。