脳卒中

脳卒中|板橋区の脳神経外科・内科 - のむら脳神経外科

脳卒中とは

脳卒中とは、脳血管の病気の総称で、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血のことです。脳卒中は、我が国における、寝たきり(要介護5に相応)の原因の第1位であり、死亡原因の第4位(日本人では年間約13万人の方が脳卒中でお亡くなりになられています)を占める疾患です。
その脳卒中ですが、2018年に「健康長寿の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が成立し、医療機関のみでなく行政や経済産業界も含めた総力戦で脳卒中征圧に取り組んでいます。
つまり脳卒中は特別な疾患ではなく誰がなってもおかしくない国民病なのです。

脳卒中の初期症状

脳卒中の初期症状は下記のような症状が挙げられます。

  • 突然、頭痛が生じた。
  • 突然、手足の麻痺(力の入りにくさ)が生じた。
  • 突然、手足のしびれが生じた。
  • 突然、ろれつが回らなくなった。
  • 突然、言葉が出にくくなった。
  • 突然、めまいが生じた。
  • 突然、物が見にくくなった(視力や視野が悪くなった)。
  • 突然、認知機能が低下した(何か様子がおかしい)。

上記の通り、「突然」がキーワードです。しかし、程度や病態によっては、症状が徐々に生じたり、わかりにくいこともあります。
重要なのは「脳卒中かな?」とご自身やご家族が疑うことです。

脳梗塞

脳梗塞は脳卒中の60%を占める疾患で、脳血管が詰まる(閉塞する)ことにより、脳細胞への血流(酸素や栄養が運ばれる)が途絶えて脳細胞が壊死する疾患です。脳梗塞は脳梗塞となった部位や範囲、原因により、症状(手足の動かしにくさや、言葉の出にくさなど)や命の危険性が異なります。以下に脳梗塞の種類を原因別に説明します。

1)脳の細い血管の閉塞により生じる脳梗塞(ラクナ梗塞)

病態

脳の細い血管が動脈硬化で徐々に進行し、最終的に詰まる(脳血管閉塞と言います)ことで生じる脳梗塞です。

原因

加齢に高血圧症などの生活習慣病が加わることで動脈硬化が進行し、最終的には血栓と呼ばれる血の固まりにより脳血管閉塞に至ります。

必要な検査

ラクナ梗塞の早期発見に必要な検査は神経学的診察(ラクナ梗塞による異常所見は脳神経外科専門医や神経内科専門医でないと判断が難しい場合が多いです)と頭部MRI検査です。(頭部CT検査によるラクナ梗塞の早期発見は非常に困難です)。

治療方法

早期の脳卒中治療薬の点滴療法に加え、早期リハビリテーション療法が必要です。

予防方法

一次予防(脳梗塞を未然に防ぐ)

高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を早期から治療し動脈硬化を防ぐことが重要です。動脈硬化は知らぬ間(痛みなどがありません)に進行し、一度生じると改善しません。
脳神経外科医は患者様の脳血管の動脈硬化の程度を頭部MRI検査を行う際に評価しています。この動脈硬化のデータと高血圧、高脂血症、糖尿病の数値データを合わせることで「脳卒中を予防するため」の生活習慣病の治療を効果的に行います。

二次予防(脳梗塞の再発を防ぐ)

「血液サラサラ」のお薬の内服が必要です。この「血液サラサラ」のお薬には「抗血小板剤」と「抗凝固剤」という2種類があります。ラクナ梗塞後の二次予防に必要なのは「抗血小板剤」です。具体的にはバイアスピリン、プラビックス、プレタールというお薬です。

2)脳血管や頸動脈が細くなり生じる脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、症候性頸動脈狭窄)

病態

脳の太い血管や頸動脈が細く(狭窄と言います)なり、脳への血液供給が減少することで生じる脳梗塞です。

特徴

分水嶺部と呼ばれる血液が届きにくい領域に脳梗塞が生じやすく、また脱水症により一時的に症状が出現することが多いため以下の特徴があります。

  • 症状がはっきりしないが様子がおかしい。
  • 手足の麻痺や呂律障害が一時的に出現し、その後改善したり再発したりを繰り返す。特に前者は高齢者の方に多く家族が異変に気づくことから診断が始まります。後者は「一過性脳虚血発作」と言われる病態でいわゆる脳梗塞の前兆です。

必要な検査

早期発見に必要な検査は神経学的診察と頭部MRI検査に加え、頭頸部MRA検査が必要です。頭頸部MRAは脳血管狭窄および頸動脈狭窄を検出するのに優れた検査です。お薬を内服しているのに脳梗塞を繰り返す患者様の原因が実は「脳の血管ではなく、実は頸動脈が細くなっていたことだった」ということは少なくありません。脳梗塞と診断された場合は頸動脈のチェックはするべきです。

治療方法

ラクナ梗塞と同じように脳卒中治療薬の点滴療法、リハビリテーション療法に加え、血管を拡張させる手術(ステント留置術、内膜剥離術)が必要になることがあります。

予防方法

一次予防(脳梗塞を未然に防ぐ)

ラクナ梗塞と同様、生活習慣病を早期から治療することに加えて、頸動脈の聴診と頭頸部MRAを行い脳血管狭窄と頸動脈狭窄を事前にチェックしておくことが重要です。血管狭窄は症状がないことの方が多い病態です。是非、当院の脳ドックをご活用ください。

二次予防(脳梗塞の再発を防ぐ)

ラクナ梗塞と同様に抗血小板剤(バイアスピリン、プラビックス、プレタールというお薬です)を内服することに加え、上述した血管を拡張させる手術が必要になる場合があります。

3)心臓からの血の固まりが脳血管に突然詰まる脳梗塞(心原性脳梗塞)

病態

多くは心房細動と言われる不整脈により、血の固まり(血栓と言います)が心臓内に生じ、血流に乗った血栓が頸動脈や脳の太い血管を詰まらせることで生じる深刻な脳梗塞です。

特徴

突然生じた手足の麻痺や言葉の障害に加え、受け答えの悪さ(意識障害)を伴います。これは心原性脳梗塞の梗塞範囲が非常に広いためです。「命の危険性」がある脳梗塞ですので緊急対応が必要となります。

  • 症状がはっきりしないが様子がおかしい。
  • 手足の麻痺や呂律障害が一時的に出現し、その後改善したり再発したりを繰り返す。特に前者は高齢者の方に多く家族が異変に気づくことから診断が始まります。後者は「一過性脳虚血発作」と言われる病態でいわゆる脳梗塞の前兆です。

必要な検査

神経学的診察と頭部MRI検査に加え心電図による心房細動のチェックが必要です。心房細動は持続的に生じている持続性心房細動と一時的に出現する発作性心房細動があります。前者の持続性心房細動は通常の心電図検査で診断可能ですが、後者の発作性心房細動はホルター心電図と呼ばれる24時間連続心電図により検出可能です。

治療方法

命の危険性がある脳梗塞で発症時間によっては超急性期血栓溶解療法(t-PAと医療従事者は言います)や経皮的脳血栓回収療法が適応となります。また他の脳梗塞と同じように脳卒中治療薬の点滴療法、リハビリテーション療法が必要です。

予防方法

一次予防(脳梗塞を未然に防ぐ)

生活習慣病の治療に加えて、心房細動の有無をチェックしておくことが重要です。それに必要なのは

  • 診察時に必ずドクターに聴診してもらう(特に重要!)
  • 健診などを活用し定期的に心電図を行う
  • 動悸の自覚症状があればホルター心電図を行う

です。特に「定期の診察時に聴診されてない」という場合は要注意です。当院では診察時に必ず聴診しますので是非当院にご相談ください。
また、当院はホルター心電図を完備しています。「時々、脈が乱れるな」と感じる場合は是非当院のホルター心電図をご活用ください。

二次予防(脳梗塞の再発を防ぐ)

心原性脳梗塞の再発予防に必要な「血液サラサラ」のお薬は「抗凝固剤」です。具体的にはエリキュース、リクシアナ、イグザレルト、プラザキサというお薬です(以前はワーファリンというお薬が多かったです)。心原性脳梗塞の再発予防に「抗血小板剤」は効果的ではありません。お薬(抗血小板剤)を内服しているのに脳梗塞を繰り返す患者様は心原性脳梗塞の可能性がありますのでご相談ください。

くも膜下出血

病態

多くは脳動脈瘤と言われる脳血管に生じた血管の瘤が突然破裂することにより生じます。その結果、くも膜下腔と呼ばれる領域に大出血を生じ、命の危険に至る深刻な病態です。

特徴

突然生じる頭痛が特徴です。「命の危険性」がある病態で脳神経外科医の緊急対応が必要となります。頭痛で受診すると「念のため、まずは脳神経外科に」となるのは多くの医師が頭痛の鑑別として、くも膜下出血を最重要疾患としているためです。

必要な検査

頭部CT検査または頭部MRI検査が有用ですが、頭部MRI検査の方がより有用です。なぜなら頭部MRI検査は脳動脈瘤以外の脳動脈解離や脳血管攣縮、脳静脈血栓症と呼ばれる他のくも膜下出血の原因も同時に検索可能であるからです。同じくも膜下出血でも原因が異なれば治療方法が全く異なりますので可能であれば頭部MRI検査を受けましょう。

治療方法

破裂した脳動脈瘤の緊急手術が必要です。手術方法は開頭クリッピング術と脳血管内手術(コイル塞栓術)があり、病態によってどちらかを選択します。

予防方法

一次予防(脳梗塞を未然に防ぐ)

無症状のうちに頭部MRIを行い脳動脈瘤を未然にチェックしておくことが重要です。脳動脈瘤は破裂しない限りは頭痛などの自覚症状はほとんどありません。当院では最新MRI装置による脳ドックを行い、検査当日に結果を脳神経外科専門医が詳しくお伝えします。是非当院の脳ドックをご活用ください。

二次予防(脳梗塞の再発を防ぐ)

破裂した脳動脈瘤は手術によりほとんどが完治します。しかし、他の部位に新たに脳動脈瘤が生じる可能性があります。そのため、定期的に頭部MRI検査を行うことが重要です。

脳出血

病態

ほとんどは高血圧により脳の細い血管が突然切れ、脳内に血の固まり(血腫と言います)を生じ脳を損傷します。

特徴

手足の麻痺、言葉の障害、めまいなどの症状が突然生じます。また、血腫の大きさによっては「命の危険性」があり緊急対応が必要となります。

必要な検査

頭部CT検査または頭部MRI検査が有用ですが、頭部MRI検査の方がより有用です。理由は、脳出血の原因には高血圧症以外の脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管腫などの異常血管がありMRI検査ではこれらの検出が可能だからです。同じ脳出血でも原因が異なれば治療方法が異なりますので可能であれば頭部MRI検査を受けましょう。

治療方法

厳格な血圧コントロールと出血しにくくするお薬(止血剤と言います)の投与を行います。また、早期にリハビリテーション療法を開始し麻痺の改善を図ります。

予防方法

一次予防(脳梗塞を未然に防ぐ)

高血圧症を中心とした生活習慣病の治療を早期から行うことが重要です。また、前述した脳動静脈奇形や脳動静脈瘻などの異常血管がある場合は若年者でも脳出血を生じますので、無症状のうちに頭部MRIを行いご自分の脳血管の状態をチェックしておくことが望ましいです。当院では最新MRI装置による脳ドックを行っていますので是非ご活用ください。

二次予防(脳梗塞の再発を防ぐ)

脳出血の再発予防には厳格な血圧コントロールが必要です。具体的には130/80mmHg未満を目指します。また、微小出血(microbleedsといいます)と呼ばれる所見が頭部MRI検査で認める患者様はさらに厳格な血圧コントロールが必要です。脳神経外科医はこの微小出血を頭部MRI検査で評価しています。「脳出血の再発予防」の血圧コントロールは脳神経外科専門医にご相談ください。